2013年07月21日
事業拡大の壁 揺れる全特
先月23日、和歌山市内で自民党公認候補の参院選決起大会が開かれた。候補者は全国の郵便局長でつくる全国郵便局長会(全特)の前会長、柘植芳文氏。
「わずかなところでいいから仕事の範囲を広げてほしいと(政府・与党に)お願いする」
柘植氏はあいさつで、郵便局の現役局長やOBら約700人を前に、全特が郵便局の収益改善のために求める日本郵政グループの新規業務参入を主張していくことを訴えた。
全特が求めるのはかんぽ生命保険やゆうちょ銀行の新規事業だ。だが、日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米合意を踏まえ、「がん保険」などへの参入は当面凍結された。米政府が政府出資の残る日本郵政グループの事業拡大に反対しているからだ。
がん保険の日本市場の占有率は、1位がアメリカンファミリー生命保険(アフラック)、2位がメットライフアリコ生命保険と、米系2社が上位を占めている。
TPPや日米間協議で、郵政の事業拡大阻止を米政府が要求することへの疑念は、過疎化で経営が苦しい地方の郵便局ほど強い。
和歌山県で地区会長を務める橋本雅己氏は「保険の新規参入が進まないのは米国の横ヤリだ」と嘆く。がん保険以外にも学資保険の新商品販売の凍結も不安材料だという。
保険・貯金は減少
郵政関係者の中では、日本の交渉参加で日本郵政グループの事業拡大もターゲットになるのではないかと警戒感が一時、広がった。
これに配慮するように、和歌山選出の世耕弘成官房副長官は全特幹部と接触し「保険は日米2国間で協議する。がんばります」と、郵便局の収益拡大の必要性に理解を示した。
郵政グループの経営状況は、民間企業との競争激化や電子メールの普及で郵便物の取り扱い量が減少。保険契約件数と貯金残高は平成24年度末までの10年間でそれぞれ約46%、約23%も減少している。
国営時代の経営基盤を武器に巨大企業として民営化したものの、将来展望はバラ色というわけでもない。日本郵政は27年秋をメドに上場する計画だ。政府も日本郵政株式の上場後に見込む売却益約4兆円を、東日本大震災の復興財源に充てる予定だが、計画の実現を危ぶむ声は日本郵政内にある。
不信感残る自民
そもそも全特は、今年3月に郵政民営化で敵対した自民党との関係を8年ぶりに修復したばかり。自民党には「離れたり寄ったりする組織は信用できない」との声も残っている。
全特は地方会合で「自民党からいまでも冷ややかな目で見られている。参院選は絶対に負けられない」と関係者にハッパをかける。参院選で組織の集票力を示し、政府・与党への発言力を高めようというのだ。
組織内候補の柘植氏は各地での会合で、郵便局を守るために与党内での発言力を確保する重要性を訴え続けている。
ただ、参院選で各業界団体が組織票を固めて存在感を示せたとしても、政府がTPPや日米2国間交渉で米国と相反する業界団体の要請を最後まで押し通すかはこれからの交渉次第だ。
日米両政府は4月に行ったTPPの事前協議で、米国が輸入車にかけている関税(乗用車2.5%、トラック25%)で、最も長い段階的な引き下げ期間で撤廃することで合意した。
日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は「関税撤廃時期については残念」と政府の譲歩に落胆の思いを隠さなかった。自由化のメリットが期待される産業や業界でも交渉結果がどうなるかは分からない。
TPPに関しては共産党や社民党、生活の党が反対だが、自民党、民主党、日本維新の会、みんなの党が推進の立場。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が先月22、23日に行った合同世論調査で、TPP交渉が参院選で最も重視するテーマとの回答はわずか1.7%だった。
市場開拓のメリットとともに、農産品の関税維持や医療制度の安定、保険の自由化など、日本の経済構造をTPPでどう変えていくかという将来像を国民に具体的に示す議論が必要とされている。
「わずかなところでいいから仕事の範囲を広げてほしいと(政府・与党に)お願いする」
柘植氏はあいさつで、郵便局の現役局長やOBら約700人を前に、全特が郵便局の収益改善のために求める日本郵政グループの新規業務参入を主張していくことを訴えた。
全特が求めるのはかんぽ生命保険やゆうちょ銀行の新規事業だ。だが、日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米合意を踏まえ、「がん保険」などへの参入は当面凍結された。米政府が政府出資の残る日本郵政グループの事業拡大に反対しているからだ。
がん保険の日本市場の占有率は、1位がアメリカンファミリー生命保険(アフラック)、2位がメットライフアリコ生命保険と、米系2社が上位を占めている。
TPPや日米間協議で、郵政の事業拡大阻止を米政府が要求することへの疑念は、過疎化で経営が苦しい地方の郵便局ほど強い。
和歌山県で地区会長を務める橋本雅己氏は「保険の新規参入が進まないのは米国の横ヤリだ」と嘆く。がん保険以外にも学資保険の新商品販売の凍結も不安材料だという。
保険・貯金は減少
郵政関係者の中では、日本の交渉参加で日本郵政グループの事業拡大もターゲットになるのではないかと警戒感が一時、広がった。
これに配慮するように、和歌山選出の世耕弘成官房副長官は全特幹部と接触し「保険は日米2国間で協議する。がんばります」と、郵便局の収益拡大の必要性に理解を示した。
郵政グループの経営状況は、民間企業との競争激化や電子メールの普及で郵便物の取り扱い量が減少。保険契約件数と貯金残高は平成24年度末までの10年間でそれぞれ約46%、約23%も減少している。
国営時代の経営基盤を武器に巨大企業として民営化したものの、将来展望はバラ色というわけでもない。日本郵政は27年秋をメドに上場する計画だ。政府も日本郵政株式の上場後に見込む売却益約4兆円を、東日本大震災の復興財源に充てる予定だが、計画の実現を危ぶむ声は日本郵政内にある。
不信感残る自民
そもそも全特は、今年3月に郵政民営化で敵対した自民党との関係を8年ぶりに修復したばかり。自民党には「離れたり寄ったりする組織は信用できない」との声も残っている。
全特は地方会合で「自民党からいまでも冷ややかな目で見られている。参院選は絶対に負けられない」と関係者にハッパをかける。参院選で組織の集票力を示し、政府・与党への発言力を高めようというのだ。
組織内候補の柘植氏は各地での会合で、郵便局を守るために与党内での発言力を確保する重要性を訴え続けている。
ただ、参院選で各業界団体が組織票を固めて存在感を示せたとしても、政府がTPPや日米2国間交渉で米国と相反する業界団体の要請を最後まで押し通すかはこれからの交渉次第だ。
日米両政府は4月に行ったTPPの事前協議で、米国が輸入車にかけている関税(乗用車2.5%、トラック25%)で、最も長い段階的な引き下げ期間で撤廃することで合意した。
日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は「関税撤廃時期については残念」と政府の譲歩に落胆の思いを隠さなかった。自由化のメリットが期待される産業や業界でも交渉結果がどうなるかは分からない。
TPPに関しては共産党や社民党、生活の党が反対だが、自民党、民主党、日本維新の会、みんなの党が推進の立場。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が先月22、23日に行った合同世論調査で、TPP交渉が参院選で最も重視するテーマとの回答はわずか1.7%だった。
市場開拓のメリットとともに、農産品の関税維持や医療制度の安定、保険の自由化など、日本の経済構造をTPPでどう変えていくかという将来像を国民に具体的に示す議論が必要とされている。
Posted by ヒトシ at 23:35│Comments(0)
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